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ガセネタ

<ドイツからの手紙>
ニホンのニコタマの皆さんコンニチハ。ヤン・ウルリッヒです。
皆さんも知っての通り、不調から今シーズンは(また)出遅れ、春からの予定レースをキャンセルになってしまいました。
さすがにちょっと凹みましたが、そこは諦めないゲルマン魂。日本からせっかく小さい夫婦が見に来るというし、ツール・ド・スイスには間に合わせてみせます。

トレ-ニングの一環として、気分転換に夜道を散歩してみました。
そして知らない道を歩いているうちに広い草原に辿り着きました。
そこに悠然とそびえ立つ大きな塔にボクは何かを感じたのです。

思い切り飛びついて無心で登り続けました。
登っても登ってもてっぺんは見えません。
登れば登る程に呼吸も苦しくなってきました。
いつしかそれは心地良さへと変わっていました。
クライマーズ・ハイとでも言うのでしょうか。アルプ・デュエズを登りきった高揚感にとても似ています。
その時、忘れかけていたあの言葉がボクを包み込みました。


『新時代の皇帝・ウルリッヒ』


『新時代の皇帝・ウルリッヒ』』



『新時代の皇帝・ウルリッヒ』



・・・

思い出した。
ボクはこの言葉に舞い上がり、そして踊らされていた。
自分を見失い自分の出来ない事までやろうとしていた。
言葉の真意を見抜けなかったんだ。
ボクは皇帝。悠然自若と構えていればいい。
アタックに反応せず、自分がレースを作るんだ。
97年に初めてツールを制した時はそうやって勝った。
98年にパンターニに負けたこと。
それからずっと、あのアメリカ人に勝てなかった。
そんな負けレースはすべて、他人のレースでした。

両手を離し飛び降りたい衝動に駆られた時、頭上に何かを感じました。
ついにてっぺんに辿り着いたのです。
そこには、ネコの着ぐるみの様なものを着た人が一人立っていました。
そして彼の後ろには、何かたいそうに祭られた飲み物が一本。
何も飲まずに登り続けて、喉がカラカラだった僕はおもむろに手を伸ばしました。
しかしネコみたいな人が邪魔をして、触る事すら出来ません。
何度か挑みましたが空腹で動く事すら出来なくなった僕にネコみたいな人は“豆”を一粒めぐんでくれました。
何故かその豆一粒で満腹となり、激闘はその後も続きました。
聞けば、前に来たアメリカ人は3年もかかったとのこと。
しかし、ボクならもっと早くできるはず。
だってもう、あのアメリカ人はいないのだから。
そして三日後、ついにネコのような人を振りきり、僕は飲み物を手にして飲み干しました。

「あの時と同じ味だ…」

97年、サンテ・チェンヌでのTTにて前方を走るヴィランクに追いつき追い越し、圧倒的な強さでマイヨ・ジョーヌを確定させた後の水と同じ味がしたのです。
そしてボクの体は塔を登る前より明らかに軽くそして強くなっていました。

ネコのような人にドリンク代と豆代を請求されたので、カードで支払いを済ませてボクは急いで地上に向かいました。
ちなみにエレベーターがあるらしく、帰りはそちらを利用しました。

戻ってテレビをつけるとパリ~ルーベが終った直後でした。
カンチェラーラが逃げ切り、大勝利を収めたんですね。
しかし今のボクは、誰が相手でも負ける気はしません。
早くレースに出たくて、うずうずしています。
それではまた、手紙を書きます。
by umezo-cyclista | 2006-04-13 20:11 | 日々
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